ジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』
相方と某Book Offに行き、福引で100円券を引き当て、「好きなの買っていいよ」と許可が出たので、100円均一の単行本コーナーに行き、見つけました。
本の裏にあった広告文句「言えなかったこと。言ってはいけなかったこと。」に惹かれたのも、このテーマはハビエル・マリアス『白い心臓』にも通じるからです。今思えば、100円券当てたこともそうですが、『白い心臓』を読んでいなければ、この本に辿り着いていなかった気もするのです。読んでてよかった。
☆★★
目次を開いてから、短編集であるということに気付き、これはいいね、仕事の合間に、お昼ご飯食べながら1篇ずつ読める!と、軽く始めましたが・・・いい。とてもいい。2つ目「ピルサダさんが食事に来たころ」なんて、焼き魚食べながら不覚にも涙してしまいました。
★☆★
9つの短編、場所も登場人物もバラバラなんですが、30代前後の、これから家庭を作ろうとしはじめた男女の微妙な距離感がものすごーく繊細に描かれていて、そこがまた、私個人的に読むタイミングが良かったんだと思います(自分の結婚式まで、あとちょうど1週間!)。繊細、繊細、繊細。さらさらっとストーリーを追いかけて、なんだか煮え切らない、ちょっと曇り空な感じというか、淡々と日常を描きながら、突然、ものすごい角度で絶妙な(でも決して劇的じゃない)スルーパスを送って寄越すんです。ピルサダさんがバングラデシュから、いーい手紙を送ってくれるんです。気難しい下宿屋の老女が、ぎこちない新婚の二人に、これ以上無い一言を投げかけるんです。9つの短編の中で、とくにこの2つのスルーパスには、泣いてしまいました。仕事中なのに。
★★☆
村上春樹を読んで日本を好きになる人がいるのだから、ジュンパ・ラヒリを読んでインドを好きになってもいいじゃない?と素直に思わせる、優しい優しい文章です。ブックオフで100円はそうそう見つからないかもしれませんが、是非、読んでみてください。山崎豊子ばっかり読んでる相方にも薦めてみようっと。
ハビエル・マリアス『白い心臓』
・結婚目前の女の子が謎の自殺。なぜ?調べていくと、こんな事実が・・「通訳」というエンコーディング/デコーディング行為についても考えさせられる一冊です。