ダンディ坂野と落語とロックの生存権
NHKラジオ「真打ち競演」で、つい数秒前にダンディ坂野氏がネタを披露していたのでメモ。
最初のひとこと「平成の怪物、ダンディです」から始まる惨劇。
ラジオなので、会場の雰囲気とかダンディの表情とか見えないんだけれど、音の雰囲気とか拍手の数、タイミングで、明らかに半分ぐらいのお客さんはヒイている。これ以上無いくらい完璧にスベッている。面白くないことに呆れ笑いを通り越して、「え、これ笑うところなの?」というざわめきがどよどよしている。そもそもダンディ自身が(自分のネタが恥ずかしいのか)ちょっと半笑いという、ものすごいぐでぐでな舞台。
ネタ終わりに、一応拍手が起きるんだけど、「面白い!」じゃなく、なんだか慈悲の拍手というか、お客さんがダンディを思いやって拍手している感がある。ここまでくると、どっちが客なのかもうわからない・・・
★★★
頭に浮かんだのは「かくてもあられけるよ」。徒然草より。
http://www.tsurezuregusa.com/index.php?title=徒然草%E3%80%80第十一段
多分ダンディ坂野は松本人志にはなれないんだろうけれど、これでも良いのだ。客を笑わせるどころか、客に笑っていただいて辛うじて生きながらえているような、自分のネタが面白いという自信が無く、それどころか、それが面白くない自信があるような、そんな存在でも、これで生きていって良いのだという大いなる肯定を見せてくれる。その辺の哲学者よりよっぽど哲学してるぞ、ダンディ坂野。
★★★
そういえば、以前伊集院光と甲本ヒロトの対談で、すごく印象的だったのが、「落語とロックの共通項について」。
ヒロトが「バカでも、勉強できなくても、どうしようもなくても、カッコ良ければOKなのがロックなんだ」とこたえ、伊集院光が「バカでどうしようもなくても、面白ければOKなのが落語。おんなじだね」と応じる。
そういえばヒロトがいつか歌っていた。
ぼく、パンクロックが好きだ 中途半端な気持ちじゃなくて
ああ、優しいから好きなんだ ぼくパンクロックが好きだ
from『パンクロック』
使うコードは3コードだけ!ベースもギターもルート弾きだけ!ドラムは8ビートだけ!歌はヘタクソ!これでも良いのだ。
ロックな、落語な優しさが、まだ残っているなら、人生は捨てたもんじゃないだろ、と思ったりしました。