『世界のすべての7月』ティム・オブライエン

同じくティム・オブライエン著『本当の戦争の話をしよう』を読んだときにまず感じたのは、この作者、ほんとに冷酷にリアリズムに徹するというか、徹頭徹尾「隠さない」作家だということです。イヤ、(例えば戦争や、老いていくということが)こういうもんなんだろうという事を、頭の裏ではわかっているつもりなんですが、それをわざわざ活字にされると、「えぇーそこまで書くのかよ・・」と。しかし、とにかく、良著です。


☆☆☆


『世界のすべての7月』にも、ベトナム戦争に関する記述があります、が、こちらの本がフォーカスするのは戦争じゃなく、あの時代―1969年に学生だった人々が体験した時代そのもの。そして彼らが2000年に「同窓会」という名目で集まり、それぞれが1969年を抱えながら積み重ねてきた30年をぼそぼそと語りはじめる。そこにはもちろん徴兵制があり、戦争反対があり、恋があり、裏切りがあり、懐疑があり、乳癌があり、深夜のどんちゃん騒ぎがある。それら全てを通して、彼らは(村上春樹風に言うなら)何らかの形で”永遠に損なわれてしまって”いる。


この作者のエグいまでのリアリティは、本の構成上、2000年の同窓会と、そこに至る回想禄を交互に記述することによって、あの当時彼らが持っていた若さが(少なくとも、肉体的には)今、失われていて、もう二度と戻ってくる気配が無いということ。当時、学級のマドンナ的存在だった女子も3児の母になり、とか、更年期障害に悩まされ、とか、、、、


中盤辺りまでは「ああ、歳はとりたくないもんだね・・・」と思ってしまいます。


☆☆☆


でも、さすがティム・オブライエン、この本にはちゃんと救いが用意されています。確かに彼らは肉体的には確実に損なわれているし、魂は深く傷ついていたりするんですが、でも、全然負ける気がしないというか、彼らは皆、見事に20代の魂のテンションを保っているんです。50半ばになっても、久しぶりに出会った、昔好きだった人と恋におちたり、裏切られた男と裏切った女がそれぞれに和解のポイントを探し当てたり。後半に行けば行くほど、嬉しくなるんです。こんな50代ならなってもいいな、とか、こんな50代になりたいな、と思ってしまいます。(ぼくは、マーヴとスクープのビミョーな「異性の友情」が大好きです・・)


20代で読むと、その後の生き方の指針が大きく変わるような、
50代で読むと、過去の過ちについての葛藤とちょっとだけ和解できるような、
そんな優しい本だと思います。

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