[レビュー]『独立国家のつくりかた』坂口恭平

タイトルがツボにはまったので読んでみたら、図らずも前回のエントリに対する答えのひとつが書かれていたり、いや、それよりも、このブログを書きはじめたきっかけに関わるテーマについて、あ、そう来るか!という回答を見つけて、かなり興奮しています。久しぶりに、いろんな人におすすめしたい本です。(以下、自分へのメモ)


何かを「変える」ことが革命なのではない。むしろ革命がすでに起きていることを、思考の転換によって見つけ出すことができる。それは「変える」というよりも「拡げる」方法論である。生き方は無数にあるということを気付く技術。それだけで「生」そのものの在り方を変えることができるのだ。(太字筆者)

現政府に不満がある。だから変えたい、変えようとする。でも、それは無理だし、無駄なことだから、私たちはもっと現実的な方法を考えないといけない。そこで行き着いたのが、一見非現実的な「独立国家をつくる」という態度。実は、以前から坂口恭平氏について書かれたものや動画を流し見をする中で、彼もまた、単純に(もしくは、無邪気に)脱原発な人なのかなーと感じていたんですが、と、とんでもない。この思考はもっと冷静にロジカルで、正しく原理主義的で、そして何より、手の届きそうな現実を見ている。


★★★


どうもうまくまとめられそうにないんですが、それでも強引にまとめてしまうと、「独立国家のつくりかた」は、まず「態度経済(※1)」に身を投げ、自分固有のレイヤーをつくること。そして、匿名レイヤー(※2)と自分のレイヤーの間の摩擦、軋轢を「拡げる」方法論で切り崩していく、という感じでしょうか。んんん、既に何を言っているのかわからない・・


態度経済

さらに平たく薄めて言うと、例えばサウンドクリエイターAが、依頼された仕事をこなす。時給幾らなのか、作品あたり幾らなのかでお金を手にする。そのお金で、クロマニヨンズのライブのチケットを買ったり。これが”普通の”貨幣経済。一方、態度経済では、サウンドクリエイターAは、「オレはこれこれこういう仕事を、命をかけてやんなきゃいけないんだ!」と、自分の態度を表明する。すると、友達が飲み会に誘ってくれたり、別の友達が作品を買ってくれたり、他の友達が音楽スタジオを貸してくれたりして、あれよというままに、自分の表明が具体化していく。そしてお金持ちにもなれる、という。「そんなアホな。何の宗教だそれは」と思うかもしれませんが、坂口恭平氏が実際そういう生き方をしているからタチが悪い・・・

昨日のエントリの回答のひとつが、これです。まず自分の態度を表明するということ。わらしべ長者の保証はどこにも無いけれど、うまくいったら面白いじゃないですか。(ちなみに、生々しい価格設定、ノーギャラの依頼についての話は、P144, P153に載ってます。)


「拡げる」方法論

ポイントは、貨幣経済を否定するんじゃなくて、ずらしてねじ込むんですよね。世界を変革なんて、大上段に構えても絶対無理だから、その世界の中で、自分の視点をちょっとずらして、隙間にねじ込んで、なんとか生き抜くんだ!という絵は、凄く現実的。つまり、手に負えない大きな敵を相手にしようとせず、小さく、小さくしていって、自分が「拡げる」方法論でなんとかなるところまで小さくしてから、気合を入れて飛び込むというのは、自分が何言っても国政は変わらないから、まずはウチの町内からなんとかしよう、という感覚にも通じると思います。ほんと、思うんですよ。自分の町を最高にできない大人達が、自分の国を最高にできるわけ無いと思うんですよ。で、じゃあ町と国、どっちから手つける?といえば、町の方が手が断然手が届きやすいし、なんか悪い友達が何人か集まれば、悪事も働ける気がするじゃないですか。

 

あと、この「拡げる」という感覚は、出典不明なんですが、どこかでボルヘスが言っていた「詩的言語とは、“使い古された語をもって語を創造する”という不可能な試み」という感覚に近いのかなという予感がしました。デュシャン好きなら、当たってそうな予感。どうだろう。

 


凄く、面白い。「あーこの本面白かった」だけで終わらせない、共感した人を何らかの行動に激しく誘う、扇情的な本です。是非。


 

 

 

 

※1 貨幣のかわりに、態度で動く経済。詳しくは本書を参照のこと。

※2一般社会、常識、空気、等々。村上春樹の「壁と卵」の壁が、まさにこれに当たるんじゃないかと思うけれど、違うかも。


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