ドイツ俗語に見る男性優位?主義

ドイツ語でよく使われる”Weichei”という言葉と、その膨大な派生語について、少々。


Weicheiは直訳すると「やわらか卵(玉、か?)」やけど、要はこの腰抜け!タマついてんのか!このモヤシ男が!ぐらいの意味になる。


面白いのは、同様の意味になる言葉が物凄い数あって、どうやらそれは日々増えつづけてるみたいだ。


http://www.weichei.info/

上記リンクから「Synomyme」をクリックし、任意のアルファベット・数字を選んでGoすると、それを頭文字とする同義語がずらり。例えば「A」で検索すると、452の同義語がある。(全部で幾つあるのか、面倒くさいから数えないけど、普通に5000は越えてるか。)


もちろん、ほぼ全ては有象無象のティーンエイジャーの造語で、殆どは日常的には使われないものだと思いますが。下記に、比較的よく使用される=30代ぐらいまでのドイツ人なら聞いたことがある表現を幾つか紹介。


Sitzpinkler – 座ってオシッコする男。


Schattenparker – 日陰に車を停める男。


Warmduscher – お湯でシャワー浴びる男。


平たく言うと、「男の子が男らしからぬ言動をとった時に、それに対する侮蔑・嘲笑の意味を込めて使われる言葉の一群」がここにある。で、こういう言葉の一群がなんでドイツ(語)で流行るの?というところに興味を持ったんです。もちろんドイツ語特有の(言語構造としての)特徴もあるんだろうけど、それ以上に、ドイツ人の精神構造上に何かきっかけがあるんじゃないか?と。


中身すっとばして結論だけ先に言うと、


①「Weicheiの同義語」は、幾つかのカテゴリーに分けることが可能。すなわち、

 a)男性の女性的な言動への嘲笑(Süßweintrinker、甘口ワインを飲む男)

   b)女性に屈する男性への嘲笑(Sitzpinker、座ってオシッコする男)

 c)社会的ルール・モラルを反故にする気概の無い男への嘲笑(Nachts-mit-Licht-Fahrer、夜にヘッドライトつけて運転する男)

   d)(女性がよくやりそうな)ドジ、失敗に対する嘲笑(Benzinauto-mit-Diesel-Betanker、ガソリン車に経由を給油する男)

 e)その他、身体的・精神的弱さに対する嘲笑(Nach-3-Bier-Kotzer、3杯目のビールで吐く男)

   f)その他、「素人っぽい」言動に対する嘲笑(Tempo-30-Fahrer、クルーズコントロールで時速30kmに設定して運転する男ーうーんこの訳ちょっと心配。誰かチェックして。)


②当然、ここには男性優位主義(マチスモーmachismo)が垣間見えるが、「Weicheiの同義語」に見られるドイツ的男性優位主義は、メキシコのマリアッチに見られるmachismoや、日本人が想定する男性優位主義と異なる。

a)「Weicheiの同義語」からは、ドン・ファン的性格、またはそれに対する礼賛が削ぎ落とされているように感じる。(唯一見つけたのはEigene-Frau-Verführer(たった一人の女性を誘惑する男)のみ。これも解釈が不安やけど・・)

b)メキシコ男性優位主義については出典要。とりあえず、『El rey』の歌詞を想定してる。

c)日本の男性優位主義についても出典要。少なくとも「女は芸のこやし」という言葉はあるよねー。


③(この辺がすっとばした結論)多分、ドイツ人男性は、まず「反A」のイメージを想定し、それが自分のあるべき姿だと規定する。「反A」は膨大な「Weicheiの同義語」を通じて礼賛される。それは多分にアウトロー的な側面を備えている。しかし彼らは自分が決して完璧な「反A」になることは出来ないと知っている、だからこそWeicheiの同義語」は真剣な議論ではなく、ジョークの部類に入り、結局それは弱々しい最後の反抗のように見える。


「反A」のイメージから逆算すると、「A」のイメージが浮かび上がる。それは多分、去勢された男性だろう。そして、ドイツ人の「反A」礼賛は、逆に自分たちがむしろ「A」のイメージに近いことを浮き彫りにする。もちろん、本人がそう気づいているかどうかは別として。


つまり、ドイツ人男性は、社会的に去勢されつつあるんじゃないだろうか?それを意識的/無意識的に感知し、抵抗を試みている、その現れのひとつが「Weicheiの同義語」なんじゃないだろうか?


もうひとつのポイントは、じゃあ「A」は誰が作ったのか?個人的にはこれはフェミニスト謹製なんじゃないかなぁと思うけど、『海辺のカフカ』に出てきたフェミニストも恐かったので、この辺は余り突っ込まないようにします。


ドイツ人男性諸氏の、冷静かつ真摯なコメント、お待ちしております。ぼくも機会見てレポートまとめて、誰かに議論をふっかけてみます。

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