バイリンガルってこんなにお得よ(翻訳)

えらくバイリンガル礼賛な記事を見つけたので勢い余って翻訳してみました。このエントリは、Rebecca Callahan氏による記事「The advantages of speaking two languages」の(今のところ)未承諾翻訳です。原文はこちらのリンクから。


https://agenda.weforum.org/2015/03/the-advantages-of-speaking-two-languages/


<以下 本文>


まとめ

1つ以上の言語を話すことは、脳の発達に大きく寄与する可能性があります。近年の研究によると、バイリンガルの若者は労働市場で有利になるだけでなく、共感や問題解決能力も高くなるようです。アメリカの大人は、幼少期に複数言語を話していた人々でさえ、多くは英語のみを話す(モノリンガル)という実情があります。最新の研究結果に照らし合わせて、アメリカのモノリンガリズム(単一言語主義)重視について考え直す時かもしれません。


2言語を話すことの優位性

ここ10数年の間、私は移民の若者の学業的、社会的、また市民としての発達、特に彼らが学校においてどのように学び、友情関係やコミュニティを経験するかのやり方に焦点を当てて調査してきました。初等教育のバイリンガル教師として、2つの言語両方に熟練することが、学業においても社会的な意味でも大変有利であることを見てきました。


しかしそこには、「生徒達の初期の社会・学業的鋭さ」から、「社会人として労働市場に参入する」ことへのリンクが欠けていました。幼少期のバイリンガリズムのための全調査のなかで、大人のプロフェッショナルな人生におけるバイリンガリズムを研究者が理解し始めたのはほんの最近になってからです。


バイリンガルはテストの成績が良く、問題解決スキルがあり、鋭い認識と、より豊かな社会ネットワークを持つ傾向にあります。加えて、バイリンガルの若者は母語の共同体とドミナント文化の両方からサポートを受けることができます。つまり「子供に投資する親が多ければ多いほど、その子は強くなる」のことわざが示すように、バイリンガルの子供は複数の村で育てられるような恩恵を受けるのです。


バイリンガルは就職しやすい

バイリンガルの若者は高校を卒業し、大学に入学する確率が高いだけでなく、就職面接で受かる可能性も高いです。就職面接についてのカリフォルニアの雇用主への調査によると、バイリンガルであることが募集要項の条件でないにもかかわらず雇用主はバイリンガルを採用し、雇用し続けたがるという結果が出ています。こんにち、フォーチュン500企業は顧客対応のためにバイリンガル、またはバイリテレート(※)の従業員を雇っています。別の調査では、バイリンガリズムは高い知的集中力や、認知症の発症が遅くなる等の効果も報告されています。複数の言語を頻繁に使うことで、共感の能力もより発達します。しかし、このような調査結果にもかかわらず、5人のうち4人のアメリカ人が話すのは英語のみです。


「英語だけ運動」が他言語習得を妨げる

これは、生まれた時に複数の言語環境に囲まれていた大人についても言えることです。アメリカ人として成長する過程で、移民の両親を持つ多くの潜在的バイリンガルの子供たちが「ホーム言語」を忘れ、英語だけ話すようになっています。「英語だけ運動」の背後の大きな社会的・政治的圧力が、バイリンガリズムに対する脅威が意識されていることを証明しています。毎日のように、アメリカ中の学校や地区は外圧に屈して、多言語の標識を撤去しています。


歴史的に見て、バイリンガリズムと労働市場の研究には「英語以外の言語の熟達レベルは区別しない」という国税調査の手法に沿って行われてきたため、一言で「バイリンガル」と言っても、かなり広い範囲のレベルが区別されずに含まれています。例えば:スペイン語のみを話す人、スペイン語と少しの英語を話す人、完全にバイリンガルかつバイリテレートな人、という風に。このデータの不均質さを見過ごすと、バイリンガリズムと労働市場の関係性がはっきり見えてこないのです。


最近ようやくNCES(National Center for Education Statistics)が、他言語の習熟度を加味した、より移民の状況に沿ったデータを扱いはじめました。


バイリンガリズムと高所得の関係

最近になって、新しいデータとさらに先鋭な分析的手法によって、非英語言語における個人の読み書き能力とバイリンガリズムについての大変有用な基準が示されました。この手法によって、それぞれの言語における会話能力の熟練度と、実際の読み書き能力を区別できるようになり、結果として研究者は若いバイリンガルの経済的優位ー高い肩書きと年収の両方の意味でーを証明することができました。


バイリンガリズムと知性の関係

1960年代から、言語学者はバイリンガリズムと知性のポジティブな関係を発見しはじめました。例えば初等教育のバイリンガルの子供は、モノリンガルの子供に比べて非言語問題解決作業に長けることが判明しています。


1990年代後半には、ある研究結果が、モノリンガルに比べバイリンガルの子供が、ワーキングメモリーを管理している時でさえ(※ここ不明)、問題解決タスクに向ける注意を非常によくコントロールできることを示しました。現在、研究者は言語習熟度についてのより繊細な測定値を含むデータを使い、移民の親を持つ子供のなかで、バイリンガルーバイリテレートな若者が、ホーム言語を使わなくなった若者より高い仕事の地位につき、高い年収を得ているかどうかを研究しています。今はモノリンガルの若者は、バイリンガル特有の認知的能力を失ったというだけでなく、正社員の地位も、高給も望み薄かもしれません。アメリカ人は2言語を習得することで得られる認知的・社会的・精神的利益を理解しつつあります。


アメリカ人の4人に1人しか他言語を喋れない

歴史的に悪名高い英語モノリンガリズムについて、最近のGallup pollは、この移民の国において、4人のうちたった1人しか英語以外の言語で会話できないと報告しています。しかし、来世紀も世界のリーダーであり続けるために、やらなければならないことは沢山あります。潜在的バイリンガルの言語回復と発達のために、学校の役割はなくてはならないものです。2言語表記をしたり、両親が子供のホーム言語スキルを伸ばそうとがんばるとしても、学校でどう教えるかは重要です。こんにちの潜在的バイリンガルが首尾よく彼らのホーム言語を保持できれば、彼らはもっと貢献できるでしょう。教育的調査によれば、移民の子供たちが英語を習得することはほとんど確実です。いちばん大きな資源であるホーム言語を保持することこそ、わたしたちが子供たちにしてやれていないことなのです。ホーム言語は根絶やしにすべきものではありません。大切にすべきものなのです。


Author: Rebecca Callahan is an Associate Professor Bilingual/Bicultural Education, Cultural Studies in Education at University of Texas at Austin.


※ バイリンガル(bilingual)に対してバイリテレート(biliterate)の定義。バイリンガルは「2言語を喋ることができる」に対し、バイリテレートは「2言語の読み書きができる」。多くの場合バイリンガルは同時にバイリテレート(つまり同義語)だが、話すことができても読み書きができない場合もある(中国系アメリカ人に多いらしい。確かに漢字は難しい・・)


翻訳協力:Mayu Amagai (@mayu_int)

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